オードリー・若林さんのエッセイ。
内容は、2010年8月から始めた雑誌「ダ・ヴィンチ」の人気連載を書籍化したものです。
今回文庫化にあたり、100ページ以上追加されていて、過去の自分を振り返り当時と今の心境を綴っているのも楽しみのひとつ。
2008年の「M-1グランプリ」の準優勝をきっかけにテレビの仕事が増え始め、30歳になってから社会に参加している実感を持つようになった若林さん。
「社会人」として、抱える社会との違和感や、驚き、経験がふんだんに盛り込まれたエッセイとなっている。
とある作家さんが若林さんを世界を初めての目でみているから、「社会人童貞」と表現している。
今では、実力派MCのひとりとしてイメージの強い若林さんだが、テレビに出始めの頃は人見知り芸人としてよく取り上げられていた。その度に「中二病」や「自意識過剰」というワードが飛び交っていたが、根底はとてもピュアなの人なのだと思う。
この本は、「人見知りが治る」とかそういった類の本ではなく、ひとりの芸人が「どのように社会とかかわっていく」のかを模索する人間の成長物語なのである。
わたしは恐らくこの本を読んだのが、4回目くらいで(笑)
初めて読んだ時の「めちゃくちゃ共感するー!!」からは、少し落ち着いて読めるようになっていることに気がついた。
わたしも近頃やっと社会との距離感を掴めてきたのかもしれない。
さしておいしくもない食べ物に「おいしい」と言うべきか、興味のない芸能人の豪邸に対するコメントなど、本音と建前の狭間で悩んでいた時に若林さんがテレビのディレクターさんに相談すると、
番組の内容や時間帯によって見る層や性別はそれぞれだから、お昼やゴールデンの番組はお正月に大勢の親戚と集まっている時の自分、深夜番組やラジオは夜コンビニの前で地元の友達と話している自分みたいに分けて考えたら?
とアドバイスをいただく。
そこから時間をかけて著者は、「本音を感情的にならずに押したり引いたり」する方法を習得してきた。
それは大人になったのではなく、側が変わっただけで本音では何も変わっていない。
けれど、そうして人と円滑にものごとを進めていくことが「大人になる」ということなのかもしれない。
夢を追っている人や、社会に窮屈を感じている人、生きているのがなぜかつまらない人、そんな方に手に取ってみてほしい。
下手くそでもいい、目の前の出来事をひとつひとつ大事に紡いでいこうときっと前向きな気持ちで本を閉じるだろう。