『仕事。』を読んだ感想

読み物
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川村元気
文春文庫


仕事には、「お金をもらうための仕事。」と「人生を楽しくするための仕事。」の2種類がある。

大人になってからの、ほとんどの時間を仕事に費やすなかで、できる限りお金のためではなく、人生を楽しくするために仕事をしたいと思う。

果たして、人生を楽しくするための「仕事。」などできるのだろうか。
そこで、『モテキ』『おおかみこどもの雨と雪』『君の名は。』などの映画制作を行った川村元気さんが「仕事。」で、山田洋次、宮崎駿や篠山紀信など世界を面白くしてきた12人の巨匠たちに自分と同じ34歳の頃に、何を想い、何を考え、何に苦しんだり、楽しんだりして、その果てに何を見つけたのか。唯一無二の仕事術が詰まったインタビューをまとめた1冊。

大人って長い。
社会人をまだ駆け出し始めたばかりなのに、いつまで続くのだろうとさっそく、根を上げそうになる。

読んでいて励まされたのは、側から見ると順調で楽しそうに仕事をしている多くの巨匠たちも、みなそれぞれ自分や自分の仕事に飽きないように工夫をしていた。
あえて道を逸れて原点に戻ってくるからこそ、エネルギッシュであり続けられるのだろうなと思った。

高度経済成長後で、良い大学に出て良い会社に勤めてサラリーマンになるとラクに生きていけると言われた時代で自ら道を切り拓いていった彼らたちの話には凄みがある。

何人かの巨匠たちは「自分たちの若い頃の話を聞いても意味ないよ。だって“時代が違う”もの」と話す中で、不思議なことに気がついた。

時代は変わっているにもかかわらず、ラクはできなくとも、せめて出来る限り安定した生活を…と求めるプロセス(良い大学に出て、良い会社に勤める)は未だに変わっていないのだ。

そして、昔よりも遥かに自分の意見や個性を表現しやすくなっている時代なのに、現実はとても味気ないと。現代社会において独創性が重んじられる風潮があるが、“まねぶ”ことで吸収することは多くあるだろう。

30代以上になると新しいものを探すより、今までの自分の人生の中に宝物があることの方が多い。
人は知らないことや習っていない(身に付けていない)ことはできない。

30代前半までに興味を持ったことは進んで挑戦したいし、どんな小さなことでも人から勧められたものは食わず嫌いをせず素直に試してみたい。そして、残りの人生をかけてアウトプットしていく。


なんのために、仕事をするのか…

その答えのひとつは、「自分の見たい景色に近づく」ためなのかもしれない。
もしくは自分の見てきた風景が仕事に反映されるのではないかな。

誠実に「自分の仕事」と向き合い続けている彼らの物語の奥には彼らの人生や日常生活までも見えてきそうな気がする。

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