『夏物語』を読んだ感想

BOOK

川上 未映子
文芸春秋


女性の「恋愛・結婚・出産」をテーマにした物語と著者がとあるインタビューで語っていたのを読んでわたしは、子どもがいる母親や独身の人などそれぞれ環境が違う女友だちが集まったよくある小説なのかなと勝手に思っていました。

ところが内容は、全然違くて重たくてやけに生々しくて、正直読むの辞めちゃおうかなと2回くらい思ったんだけどなんとなくこのブログのコンセプトでもある20代のうちに読んでおくことが使命のようにも感じてゆっくりゆっくり、でも最後は一気に駆け抜けていくような感じで読み切りました。


主人公の夏目夏子は貧しい家庭に育ち小さい頃に父親が突然出て行ってから母親と姉の巻子、祖母のコミばあと一緒に過ごします。

母親が50代という若さで亡くなってからは、母親代わりに育ててくれた巻子もまたシングルマザーとなり娘の緑子を育てていきます。

母親は、自分を産まなければ経済や肉体的に苦しまずに生活できたのではないかと思う娘(緑子や夏子)の気持ちが綴られている中で、彼氏もいない、男の人と肉体関係を持つことを好まない夏子が、「子供がほしい」と思い悩み続ける日々も描かれています。

どこかで昨日までと違う人生や感情に出会って、新しい一歩を踏み出している人たちがいる一方で、ずっと同じままの自分に焦る気持ち。

そのときにやらなくちゃいけないことをやってたら今になっていたというだけで、考え方によっては、子どもを産まないほうが自然なのではないか。

子どもが欲しいというのは、子どもを育てたいということなのかそれとも、産みたいということなんだろうかそれとも、妊娠したいということなんだろうか。

夏子はまだ見ぬ我が子に会いたいという想いからAIDの存在を知り、実際に調べていく中で自分の父親がわからずに育った当時者の心情を聞き、親を知らないことは子供にとって不幸なのか、自分がしようとしていることは罪深いことなのか…

高齢出産と限られた時間の中で起こる葛藤や願いがとても濃く描かれています。

最後に夏子が選ぶ決断をどうか見届けてほしいです。


著者はインタビューで、「恋愛・結婚・出産」というのはすべてセットだと思われているけれど、すべて独立していて、でも緩やかには繋がっていると話していました。

これらを両立させて墓場まで持っていける人は才能や環境に恵まれた運の良い一部の人だから完璧を目指すことはないと。

感覚で日々の選択をしてきたわたしからすると、分解してみたらスポット、スポットで経験していけることもあって、それがいつか線となって繋がることなんていくらでもあるんだろうなと思いました。

30歳を目前に自分の将来を考えるのと同時に、なんで自分は生まれてきたのかなと自分の役割や命についても考えることが増えたように思います。

大袈裟だけどそれが生活に直で結びついているはずだから。

「女性」であることや「結婚」、「出産」についてすごく考えさせられる小説で、厳密に言うとすごく考えてるな夏子はなんだけど。

「そんなことを考えること自体がナンセンスだよ!」と言う人も中にはいるだろうけれど、たくさんたくさん考えたあとに優先する、感覚やシンプルな感情がより特別で大きな意味を持っているように思います。

形にとらわれないいろんな愛のあり方があってもわたしは良いと思う。

未来は今の延長線上だから過度に期待はできないけれど、それでもいつかわたしもまだ見ぬ家族に会えたら良いなとどこかでうっすら期待しているのです。

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