『僕の人生には事件が起きない』を読んだ感想

「僕の人生には事件が起きない」を読んだ感想読み物
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『僕の人生には事件が起きない』あたかもライトノベルのようなタイトルにしてみたというハライチ・岩井勇気さんの日常を綴ったエッセイ。

小説新潮での連載をきっかけに文章を書きはじめたコラムは好評で、ほどなくしてWEBサイトでの連載も開始!

TBSラジオ『ハライチのターン!』では時折話す、岩井さんの日常のちょっとした出来事で「そこに焦点をあてるのか!」と感心する面白さは、エッセイを書く上で身につけた自分の視点を持ちながら生活することに繋がっているのかもしれない。

コラム「組み立て式の棚からの精神攻撃」では組み立てる大変さ以上に「作るぞ!」とモードに入ることがなにより遠く、そしてその期間は極めて短く貴重であることについて書かれており、北欧風のおしゃれインテリアショップで購入した経験がある方は頷ける方も多いのではないでしょうか。

加えて「組み立て式の棚、ふたたび」が登場し、ほんの小さなズレや綻びにより、全てが壊れてしまうことについて書いています。
誰も組み立てることができない棚を買ってしまったが故に「家族に不穏な空気が流れる」描写はありありと目に浮かび、どこの家にも起きるよね。と思わず共感してしまう。

「野球嫌いの僕が落合福嗣と神宮球場へ行った」コラムでは、スポーツ観戦に興味がない岩井さんが落合元監督の息子、落合福嗣さんとはじめて野球観戦に行った日のことを記している。

わたしはそもそも「運動」が得意ではなく「人混み」×「大声」なんかも苦手で、総体的にスポーツ観戦は無縁と決めつけてしまっている節がある。滑り出しの部分はうんうんと頷いていたものの、岩井さんの場合は苦手なものにも「乗ってみる」。というスタンスが素敵だなと思った。

「麻雀の不吉な上がりのせいで死に怯える羽目になる」では岩井さんの好きな麻雀について書かれているのだが、前述のように自分の好きなことを話す時には、熱量を乱暴にぶつけずに「自分がわからない野球の話をされている」つもりで話すように意識しているとのこと。人に対する距離感が上手なのだろうと読みやすい文体から人柄が覗く。

岩井さんは多趣味でどんどん興味を持つシーンが多いが、決してその引き出しを振りかざしたりしない。だからこそファンにも信頼されているのだと感じました。

濃い味付けのものは美味いけど、そうじゃないもののほうがずっと長く食べていられるらしい。

岩井さんのエッセイを読みながら、自分なりの「どんな日常でも楽しめる角度」を見つけていけたらいいなと思いました。

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