『浅田家!』のあらすじと小説を読んだ感想

読み物
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中野 量太
徳間書店


浅田家の次男(政志)は、家族を巻き込みながらなりたかった写真家になった。
実話をもとに構成された物語です。

「一生にあと一枚しか、写真が撮れないとしたら」。彼の答えは自分の家族を撮ることでした。

お父さんのなりたかった消防士やお母さんの憧れの極道の妻、お兄ちゃんの夢だったレーサーなど、様々なコスプレを家族で楽しみながら撮った家族写真はのちに写真界の芥川賞・木村伊兵衛写真賞を受賞します。

受賞をきっかけにみんなの家族写真を撮り始めた矢先、東日本大震災が起こります。

初めて家族写真の依頼を受けた、家族が住んでいたのが岩手県。政志は安否を確認するために向かった先で、写真を返却するボランティアに参加することにしました。

そこで被災し父親を亡くした少女と出会い、「私も家族写真を撮って欲しい!」と依頼を受けるが一度は断る政志…。

震災を通して写真の力や家族の大きさを考えさせられます。


読み終えた後、どんな形であっても家族はいいなと思わせてくれる作品です。

お兄ちゃんの言葉で「悔しいけど両親を喜ばせるのはいつも弟だった」という部分は、我が家にも通づるものがあるかもと共感しちゃいました(笑)

お兄ちゃんは、消防車を借りたり極道らしい門構えの家に撮影の交渉をしたりと弟の写真家活動に一役買っています。

その裏には両親の喜ぶ顔が見たいからと少し弟に嫉妬心もありながら、でもそんな弟を誇りに思う優しいお兄ちゃんが私も長女だからか印象的でした(笑)

浅田家は、小さい頃からの夢を叶えてバリバリ働くお母さん、そんなお母さんをサポートするために家を守るお父さん。

それぞれの役割があって、良いところが見えやすい人やそうでない人がいるだけで家族や友情、職場など人間関係はバランス良く成り立ってるんだと思う。その人の近くにいるから、自分がそうゆう役回りなのではなくこの自分だから自分の足りていない部分を補うように、そうゆう人たちが周りにいてくれてるんだろうなと思います。

お父さんがなかなか就職しない政志に「政志はなりたい自分になれるといいな」と告げるシーンも素敵です。

なりたい自分というのにも色々とあると思います。憧れの職業につくだけじゃなくて、もっと小さいなりたい自分。

たとえば、自分の機嫌をいつもコントロールしてあげられたり、家族が心身共に健やかに過ごせるよう向き合い続けられる人になるとか。

この作品は、血の繋がっている家族にだけ焦点をあてているのではなく、大きな「人との繋がり」を描いています。

今回わたしが感じたのは『信じること』がキーワードになっている作品のようにも感じました。自分に対してもそうだけど、信じるのはすごく難しい。手放す方が簡単だから「信じたい」・「信じられる」そう思える人がいるのは幸せなことだと思います。

例えばその人が嘘をついていたとしても、嘘をつくぐらい何か事情があったんだなと思えたり、今は停滞した生活を送ってるけど腐ってるわけではなく、次へ進むために必要な休息なんだろうなと見守れたり。人との関わりで大事なのは相手を信じてあげられることなんじゃないかなとこの作品を通して思いました。

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