『明るい夜に出かけて』を読んだ感想

読み物
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佐藤多佳子
新潮社


とある事件をきっかけに大学を休学し、東京にある実家から少し離れた神奈川で一人暮らしとコンビニの深夜アルバイトを始める。

人と話すことが苦手な富山は始めたばかりのアルバイトでもこのまま逃げてしまいたいような出来事を作ってしまう。そんな彼には裏の顔がある。ラジオが大好きでかつて天才と呼ばれた職人(ラジオにネタメールなどを送る)だった。

事件後からラジオとも距離を少し保ちながら聞いていた富山だったが、コンビニでの出会いを中心に止まっていた彼の心のなにかが動き始める。深夜ラジオを通して人々の繋がりを感じられる小説。


わたしの大好きな「本」と「ラジオ」が1つになった夢のような作品。ラジオを舞台とした本を探したことがなかったのは盲点でした。ラジオを聴いているような心地よい作品で、どうして人々にラジオが愛されているのかがすごく上手に描かれています。

自分の推すパーソナリティをみんなと応援したい気持ちはそれぞれの場所で聴いていても、どこか一体感があるし、誰かを呼ぶほどではないけれど少し寂しい夜や励まされたい時、程よい距離でラジオは私たちの生活を必ず照らしてくれる。

パーソナリティだけではなく、よく聞くリスナーの投稿にクスリと笑えて「あー、今日の最後にちょっと笑えるほどには回復している。悪くないな。」と思えたり。

顔も知らない人たちなのに、ラジオを通して1人じゃないと遠い誰かに救われて繋がっているような感覚を与えてくれる。

ラジオ好きにはたまらない1冊!ラジオを聴いたことない方は興味を持ってもらえると思います。

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